まいぷれ編集部(舞鶴・綾部・福知山・宮津・与謝・京丹後)オススメのお店
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舞鶴の海産物と言えば、まず思い浮かぶのは新鮮な魚介類ですが、地元で愛され続けている隠れた名物があることをご存知でしょうか。それが舞鶴平天です。年間12万枚を売り上げる舞鶴かね和の看板商品である平天は、20年以上変わらぬ製法で作り続けられている伝統の味。他の地域ではなかなか見ることのできないこの逸品について、今回は店長の合田さんに、その知られざる製造工程と職人のこだわりについて詳しくお話を伺いました。
平天について教えていただくと、他の地域では馴染みがない方も多いこの食べ物について、合田さんは次のように説明してくれました。
合田さん:
「平天は、魚のすり身を平べったく四角に整形して揚げたものです。基本的にはアジとキスがメインで、たまに違う魚も入ったりします。四角いのが特徴で、一般的なさつま揚げとは形も製法も違うんです」
「うちの平天の作り方は多分珍しいと思います、舞鶴では。他のかまぼこ屋さんは冷凍のすり身を使ってるところが多いんですけど、うちは生の原料で全部やって、すり身にするところから全部作ってます。この形がもう全国でほとんどないんです」
四角い形が特徴的な平天。一般的な丸いさつま揚げとは異なり、平べったい四角形に整形されているのが舞鶴平天の大きな特徴です。その起源について伺いました。
合田さん:
「昔は魚に溢れていました。同じ魚ばっかりで、今みたいに冷凍技術もなかったし、それならもうその魚の原体で売れなければ全部頭切ってから潰して揚げたらええわっていう感覚やったと思うんです。でもこの近年、水揚げが少ないから捨てるようなイワシで作ってたものが、今みたいな高級なイワシになってしまうと、昔のように作ったら採算とれないんです」
舞鶴平天は、魚が豊富だった時代の知恵から生まれたソウルフードなのです。現在では原料確保が困難になっているものの、舞鶴かね和では伝統の製法を守り続けています。

他の練り物メーカーとの違いについて尋ねると、合田さんは現在の業界の現状と舞鶴かね和のこだわりについて詳しく教えてくれました。
合田さん:
「冷凍の魚のすり身っていうのがあるんですよ。基本どこも使ってて、それに最後混ぜ合わせる調味料と混ぜ合わせて、ただ混ぜてるだけなんです。最後の工程の時に何かしら他のものを入れると別の食感で面白くできるんですけど、結局後で何かを入れるってなるとそっから揚げてからドリップが出るから食感も変わります。それに比べると、かね和の平天はシンプルイズベストの素朴な感じですね」
舞鶴かね和では、この伝統的な製法を貫くことで、冷凍すり身では決して出せない独特の味わいと食感を実現しています。
平天に使用する魚の種類について詳しく聞いてみると、季節ごとに使い分ける魚の特徴と役割について教えてくれました。
合田さん:
「基本はアジとキスですね。たまに違う魚も入ったりします」
舞鶴平天に使用される魚の種類と漁獲時期、そしてそれぞれの特徴は以下の通りです。
| 魚種 | 漁獲時期 | 特徴・役割 | 注意点 |
| アジ(真アジ・青アジ) | 通年 | 青魚の独特の風味、味の決め手 | 多いと冷めた時に食感が固くなる |
| 沖キス(大きいキス) | 9月~3月 | 潰すと粘り気が出る、食感を整える | 4~5月はアミエビで赤くなるため不使用 |
| カマス | 9月~11月 | 潰すと粘り気が出る、食感を整える | ― |
| タラ | 9月~2月 | 小さいサイズ、調整用 | 入れすぎると後味が苦くなる |
それぞれの魚の役割について伺いました。
合田さん:
「アジとかイワシとかが青魚の独特の風味であったりとか、食感的に粘り気が強くいカマスとかキスやタラをちょっと入れて調整したりしてます。それぞれの魚のバランスをその時の脂のりとか見ながら作っています」
「魚自体に脂があまり乗ってるとこういう練り物向いてないんですよ。複数の魚をミンチ通して混ぜ合わせた時に、脂が邪魔して調味料とまとまらないし、つなぎたくさん入れないとバラバラになるんです」
特に沖キスについて、合田さんは詳しく説明してくれました。
合田さん:
「一般的なキスの天ぷらのキスじゃなく、本ギスとか言われるものなんですけど、もっと大きいです。この大きいキスは主に9月から底引き網で獲れるものなんです。だいたい9月から3月ぐらいまでが使用期間なんですよ」
「4~5月も穫れるんですけど、アミエビをいっぱいハラに持ってるから、頭切ってはらわたを取る時、きれいにアミエビを取っておかないと、アミエビの赤い色が入っちゃうのでこの時期のものは使ってないです」
このように、魚の状態を見極めながら最適な時期に仕入れることで、平天の品質を保っているのです。

舞鶴かね和の平天作りは、すべて店内で行われています。お客様に見えるところで加工しているのは、自信の表れでもあります。製造工程について、詳しく教えていただきました。
まず最初の工程である魚の下処理について聞いてみました。
合田さん:
「大量に水揚げがあるときに仕入れて、下処理後、揚げる分だけ残して冷凍保存してます。基本頭落としてはらわたを取って保存しています」
すり身作りの工程について尋ねると、非常に繊細な技術が必要であることがわかりました。
合田さん:
「完全解凍してしまうとドリップが出ちゃうんで、半解凍して機械に入れてすり身を作っています。潰したものが出てくるところに一個フィルターがあるので、落とし切れてない鱗とかはフィルターに引っかかってくるんですよ」
すり身ができたら、次は調味料との混ぜ合わせです。
合田さん:
「卵とデンプンと、あとはちょっとした甘味料とか、シンプルですよ」
シンプルな材料だからこそ、魚本来の味を活かすことができるのです。
平天の特徴である四角い形への成形について詳しく聞いてみました。
合田さん:
「専用の型があるんですよ。ベルトコンベアみたいな部分で、ポチャンポチャンって出て、それで勝手に入る感じです」
専用の機械を使用することで、均一な四角い形に成形されていきます。
揚げ工程についても伺いました。
合田さん:
「高温180℃ぐらいで揚げてます。他のかまぼこ屋さんはもうちょっと低温で揚げるらしいんですけど、うちは高温で揚げます。片面がキツネ色っていうかそれぐらいで、またひっくり返して同じぐらいで、1分か2分ぐらい揚げます。浮いてきたら出来上がりです」
高温で短時間揚げることで、中はふんわりとした独特の食感を実現しています。

年間を通して安定した品質を保つための配合調整について詳しく聞いてみました。
合田さん:
「年間通して仕上がりが一緒になるように調整してます。季節やその入荷によって入る魚がちょっと種類が増えたり、2種類あったり、3種類あったりする中で、ちょっと違う味が楽しめるかも?ぐらいの方がいいかもしれないですね」
さらに、別の魚を使った際の失敗談も教えてくれました。
合田さん:
「青味と呼ばれるものを通年使ってるんですけど、メアジっていう魚を一回使ってみてくださいって言われて使ったら、異常に身がしっかりしていました。前例がないから他の調整がわからなくて、翌日食べたりした時になんなん?この固さ。身が締まりすぎるというか。だから伸ばすものがもっと必要やったとかいうのもありました」
このような試行錯誤を重ねながら、最適な配合を見つけ出している職人の技術力がうかがえます。

舞鶴平天の製法に込められた意味について、合田さんは熱く語ってくれました。
合田さん:
「骨を取らずに骨がちょっと口に当たるっていうのが平天の醍醐味です。四国の宇和島の天ぷらとかがジャコ天って言われているものが口あたりが懐かしいなっていうのは、昔ながらの製法でやってるからなんです」
「頭切ってそれを潰して味付けして、そこから卵を入れてつなぎ入れて整形してあげるっていうのが昔の形で、この形がもう全国でほとんどないんです」
骨が少し残っているのも、昔ながらの製法を守っている証拠なのです。これにより、現代の効率化された製品とは一線を画す、懐かしい味わいを実現しています。

平天の美味しい食べ方について教えていただきました。
合田さん:
「ちょっとだけ炙って生姜醤油か大根おろしがめっちゃ合います。冬はおでんの具にすると美味しいです。骨も全部入ってるんでそこからいい出汁も出ます」
そのまま食べても美味しい平天ですが、少し炙ることで香ばしさが増し、より一層美味しくいただけます。また、おでんの具材としても人気で、魚の旨味が汁に溶け出して、他の具材も美味しくしてくれます。
平天の意外な人気について、興味深い話を聞くことができました。
合田さん:
「相撲部屋に行くお客さんがいて、3キロとか5キロとかを買っていかれます。土俵作ってる人で、いろんな大学とか相撲の顔を出す時に持っていってあげているそうです。『何曜日に行くから5キロ用意しといて』とか言ってて、ちゃんこに入れるために差し入れするって言ってました」
舞鶴平天は、その素朴な味わいと栄養価の高さから、相撲部屋や大学相撲部のちゃんこ鍋の具材としても重宝されているそうです。力士たちにも愛される伝統の味なのです。

お店で揚げたての平天を食べることができるかどうか聞いてみました。
合田さん:
「営業時間中に平天製造はしてるから、揚げたてがある時はお声掛けいただいたら揚げたてお渡しできます。だいたい午前中、開店と同時ぐらいが多いですね。8時半から10時ぐらいが多いけど、毎日揚げてないから。できたてのタイミングあったらラッキーですね」
揚げたての平天は格別の美味しさ。運よく製造タイミングに出会えた方は、ぜひ熱々の状態で味わってみてください。
合田さん:
「揚げたては何でもうまいですよ。冷めた時に差が出るんです」
職人ならではの言葉に、平天への自信がうかがえます。

近年の原料事情について、合田さんは現実的な課題も教えてくれました。
合田さん:
「原料が高騰してるから通年一年間でずっと売れるかっていうと、結局大きいキスの原料がなくなるともう代わりがないんです。9月まで原料がないので、今の在庫が終わり次第いったん終了です。昔と違って今は年中じゃなくなったってことですね」
近年は原料となる魚の確保が困難になっており、舞鶴平天も季節限定での販売となることがあります。この伝統の味を守り続けるための苦労がうかがえます。

舞鶴かね和では、平天の製造をすべて店内で行っており、その様子をお客様に見ていただけます。
この透明性こそが、お客様からの信頼を得ている理由の一つでもあります。製造工程を隠すことなく、堂々と見せることができるのは、品質と技術への絶対的な自信があるからこそです。

将来への展望について聞いてみると、合田さんは新しいアイデアについても話してくれました。
合田さん:
「整形する前のすり身でも、スプーンでパパッて鍋にも入れれるし、そういうアイテムもできるかなとは思ってるんです。特に11月以降は寒い時期になるので、そういう時期にすり身としての商品を販売して、ご家庭で半解凍した後、油で揚げてもらったり、鍋にも入れてもらえるかなと思っています」
伝統を守りながらも、新しいニーズに応える姿勢も忘れていません。

舞鶴かね和の平天は、単なる練り物ではありません。20年以上変わらぬ製法で作り続けられている舞鶴の伝統の味であり、職人の技と海の恵みが詰まった逸品です。生の魚から作るこだわり、季節による配合の調整、そして伝統製法の継承。これらすべてが、他では味わえない舞鶴平天の美味しさを生み出しています。
原料確保の困難さや製造の手間など、様々な課題がある中でも、この伝統の味を守り続ける合田さんをはじめとするスタッフの皆さんの努力には頭が下がります。
合田さん:
「普通のさつま揚げとかっていうところだと、その中に後から足した具材の食感みたいなところがほとんどですけど、これはどっちかっていうと、魚本来の味を楽しめるっていうところです」
舞鶴にお越しの際は、ぜひ舞鶴かね和で本物の舞鶴平天を味わってみてください。運が良ければ、揚げたての熱々を楽しむこともできるかもしれません。そして、その一口一口に込められた職人の技と伝統の重みを感じていただければと思います。
舞鶴平天は、まさに舞鶴が誇る食文化の宝。この味を次の世代にも受け継いでいくためにも、多くの方にその魅力を知っていただきたいと思います。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。